生まれてこの方思考を止めたことがない。
 ……などと言えば当然嘘になるが、残念ながら私は10年間小説という表現、ないし文字という媒体に踊らされた稚拙な哲学者である。カトリックの話は何回かしたが、神という概念が好き、というより。神という虚像を作り出した人間に興味がある。人間は興味が尽きない。情報量の塊だ。それが日本という小さな島国だけで1億人以上もいるというのだから、これを全て解き明かすには途方もない時間がかかるだろう。それこそ人類が滅亡するまで。その間にも人間は減り、増え続ける。情報には際限がない。これが観測できるインターネットというものは、私という酔狂な人間が魅せられるまでそう時間はかからなかった。
 白と黒で構成されたゴシック体が好きになったのはいつのことだろう。小学生の時辞書を読んでいた。内容は頭にほぼ入らない。ただ字を追っていた。形が美しく、表現が美しく、紡がれる語彙が好きだった。それだけだ。私は感情で物事を考える。他者より言語化が上手い気がしているのは、単純に回数の問題だ。私は幾度も幾度も問答をしている。己とは何か、他者とは何か。この世で私が一番興味のある人間は私である。だから私は私が好きだし、最も私の好みに合った人間、というのは、間違いなく自分自身だと確信している。ああ信号のLEDが目に眩しい。外に出てみようか。こんな夜に? 今日は寝れるだろうか。強制シャットダウンは怖い。怖いけれど、それをするしか思考を止める術はない。一度始まってしまえば坂道を転がる鉄球のように止めることなどできない。今は音楽を聞きながら空を見ながら周囲の音を聞いて街灯に当てられベランダで煙草を吸っている。こうやって文字に溺れるのも随分久方振りだ。並び立てる文字列に意味は無い。話題が転がるのは許してくれ。これは小説ではなく随筆である。それすら崇高な呼び方だ。ただの思考の殴り書き。時折こういうことをしないと気が狂いそうになる。今日は少し、他人を批評しすぎた。自己に目を向けなければならぬ。己の状態を客観視できていない。この情報の錯乱が嫌で私は毎度凝りもせず過剰な睡眠薬を喉に滑り込ませるのだ。あの感覚だけは好きだった。死に似ているような気がするから。苦しいのだと感じると笑える。生存という苦痛は死に似ている。嗚呼、素敵。物理的な苦しみは私を楽にさせてくれる。喉を通る物理的な塊の数々。飲み込めなくて、飲み込めなくて、何度も何度も水分を詰め込む。なにかに酔っていないと人間やっていけない。ハハ、鳥が鳴いている。こういう時ばかり環境音は私の鼓膜を突き刺し脳に情報を詰め込むのだ。こんなにも大音量で音楽を聞いているのに。湿った空気が肌に張り付いて気持ち悪い。情報量が多いと安心する。溺れていられる気がする。故に文字が好きというのもあるのだろう。私は節穴だから、解像度の高い世界は少し疲れてしまう。iPhoneのカメラより解像度が高い映像は疲れる。処理だけで気持ち悪くなる。あー吐きそう。夕飯の薬はとっくに溶けたか? 今なら胃酸を吐き出してもいいだろうか。こんなんだからえいえんの思考停止を望むのだ。思考するのが好きだし、自分のことは好きだし、価値観も、こういう部分も、偶に苦しくなるのも、好きだ。好きだけれどそれと同時に相反した永遠に何も考えたくないという衝動に駆られる。思考は巡っているから変に冷静で、以前に残薬を全て流し込んで痛い目を見た私は残りの日数を数えてきちんと3袋分の薬を飲んだ。ああそうだ。私は時間を飛ばしたいのではない。思考を止めたいのだ。この止め処無い洪水を無理矢理堰き止めたいのだ。酒でも飲めば鈍るか? 微妙な気がする。そういえば今日は朝から妙に口が達者だった。その時点でダメだったのかもしれない。車の音がする。洗濯バサミの構造が妙に気になる。これを止めるにはシャットダウンするしかない気がする。さながら熱暴走。吐きそう。気持ち悪い。頭は痛くなくなったけど今度は吐きそう。口から黒いゴシック体が零れ落ちたらどうしよう。流れるだろうか。性分として恐らく頭がうるさい。うるさいのに全然情報が入ってこない。全部すり抜けている。勿体ない。こんなにも良いものなのに。暑いな。夜は人を狂わせる。滑稽にも程がある。どうせ明日になればこんな思考捨てている癖に、せめてちゃんと狂えたら良かったのに。狂っているのか? 客観視が足りない。今の状態が分からないのが酷く苦しい。考察はできるが真実には至らない。やはり自身というのは未知である。最も興味深い。あータールに酔ってきた。ピカピカの床がこちらを見ている。徘徊でもしようか。一人暮らしなら恐らくしていた。夜の街を宛もなく歩いていた。思考が止まるまで。全部流れていく。頭に入らない。勿体ない、勿体ない。掻き集めても消えていく。1秒前は掬えない。私はなんだろうか。私という人間の形を知りたい。私という人間の価値観を知りたい。私という人間を予想したい。この世で一番価値がある。あると思わないと気が狂う。助けてくれ、助けてくれ、あーーーもううるさいな。うるさい。音楽がうるさい。もっと拾いたいのに拾えない。なんでこんなことになっているんだろう。知らないよそんなの。今日のルーレットが外れだっただけ、とっとと薬を飲んで寝ればいいのにそれすら勿体ない。いいなぁ、って思う。拾える人間が。私は下手くそだ。


 止まらないのでここで終わり。殴り書きでした。死ねたら良かったのにね。そしたらもっとしあわせだった筈なのに。しあわせの形なんか知る由もないし知ったところで意味もないけど。ハハ、ウケる。

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